

11月7日は立冬。暦の上では、ここから冬が始まります。朝の布団から出るのがつらくなってきた、足先がなかなか温まらない……。そんな方は、漢方でいう「腎(じん)」が少しお疲れ気味かもしれません。
漢方の「腎」は、体の“生命力の貯金箱”
漢方の五行説では、秋は「肺」、そして冬は「腎」の季節とされています。
ここでいう「腎」は、西洋医学の腎臓だけを指すのではありません。成長・生殖・老化に関わる生命エネルギー(腎精(じんせい))をたくわえる場所で、いわば“生命力の貯金箱”のような存在です。骨や歯、耳、髪、そして水分の調節(おしっこ)とも深く関わっています。
へ~と思う話をひとつ。漢方の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』には、女性は7の倍数、男性は8の倍数の年齢で腎の力が節目を迎える、と書かれています。女性なら49歳ごろ(7×7)が大きな変わり目とされ、ちょうど更年期の時期と重なるのは興味深いところです。
こんなサイン、ありませんか? 腎のお疲れチェック
✓ 手足や腰まわりが冷える
✓ 足腰がだるい、重い
✓ 夜中にトイレで目が覚める
✓ 白髪や抜け毛が気になってきた
✓ 耳鳴りや聞こえにくさを感じる
✓ なんとなく気力がわかない
寒さは腎の力を消耗させやすいといわれ、冬はこうしたサインが出やすい季節です。
「黒い食材」で腎を補う ― 黒色入腎(こくしょくにゅうじん)
秋のコラムでは、白い食材が「肺」をうるおす「白色入肺」をご紹介しました。冬はその“黒バージョン”。漢方では黒い色の食材は「腎」に働きかけるとされています。
- 黒豆・黒ごま:腎を補う代表選手。煮豆やすりごまで毎日少しずつ
- ひじき・海苔・昆布:海藻類はミネラルも豊富
- 黒きくらげ・黒米:スープやご飯に混ぜて手軽に
- くるみ・山芋・えび:黒くはないけれど、腎を補う食材として昔から使われてきたもの
また、腎と関わる味は「鹹(かん)=塩辛い味」。味噌や海藻の“ほどよい塩味”は腎を助けるとされますが、とりすぎは逆に負担になるので、あくまで「ほどほど」が合言葉です。
冬は「ためこむ」季節 ― 早く寝て、ゆっくり起きる
『黄帝内経』では、冬は「閉蔵(へいぞう)」、つまりエネルギーを外に出さず、しまっておく季節とされています。そのため冬の過ごし方として「早く寝て、日が昇ってから起きる」ことがすすめられています。
植物が冬に根に栄養をためるように、人も冬はがんばりすぎず、エネルギーを“貯金”する時期。夜更かしや、汗をだらだらかくほどの激しい運動は控えめにしましょう。
冷えや夜のトイレが気になる場合には、腎を温めて補う「八味地黄丸(はちみじおうがん)」のような漢方薬が用いられることもあります。ただし体質によって合う・合わないがあるので、気になる方は薬剤師や医師にご相談ください。
今日からできる、小さな一歩
- ご飯に黒ごまをひとふり、黒豆やひじきの常備菜をつくる
- 腰とお腹を冷やさない(腹巻きやカイロは「腰」に貼るのもおすすめ)
- 足首を出さない服装で、下半身を温める
- いつもより30分早く布団に入る
- 寒い朝は無理に早起きせず、日が昇ってから活動を
冬にしっかり腎をいたわることは、春を元気に迎えるための準備でもあります。“生命力の貯金”を、この冬から少しずつ始めてみませんか。