
薬剤師 たまちゃん
長年薬剤師として、地域の皆様の健康をサポートしてきました。 私自身も子育て真っ只中、更年期を経験しているからこそ、 同じように悩まれている方々の気持ちに深く共感できます。 ホルモンバランスの変化による体調不良や、心の揺れ動きなど、 一人で抱え込まず、ぜひお話を聞かせてください。 自身の経験に基づいたアドバイスで、皆様の心と体の健康をサポートいたします。

「脂は体に悪い」
そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし実際には、脂質は細胞膜・ホルモン・エネルギー代謝を支える、生命活動に不可欠な栄養素です。
問題となるのは “量”よりも“質とバランス”。
どの脂を、どのように摂るかで、体内の代謝や炎症の状態は大きく変わります。
今回は、薬剤師の視点から「脂肪肝」と「炎症・脂質代謝」 の関係に少し踏み込んで整理してみます。
【脂肪肝とは】
肝臓は、余分な糖質を中性脂肪へと変換して一時的に蓄える働きをもっています。
この脂肪が過剰に蓄積した状態が脂肪肝です。
ただし、単に脂肪が存在するだけでは必ずしも病的とはいえません。
近年では、脂肪の蓄積に加えて「炎症」が起こることが、肝機能低下や病態進展に関与する と考えられています。
そのため、体内で炎症反応を促進しやすい脂質の摂り方は、結果として肝臓への負担につながる可能性が示唆されています。
脂質は単純に「良い・悪い」で分けられるものではありませんが、あくまで目安として、リスクの大きい順に整理すると次のようになります。
① トランス脂肪酸
→ 細胞膜の流動性や脂質代謝への影響が指摘され、最も注意したい脂質
② オメガ6脂肪酸(過剰時)
→ アラキドン酸カスケードを介して炎症系が活性化しやすい
③ 酸化した脂質 飽和脂肪酸
→ 過酸化脂質として細胞ストレス・炎症との関連が報告されている
④ 飽和脂肪酸(過剰時)
→ インスリン抵抗性や脂質代謝への影響が示唆される
⑤ オメガ9脂肪酸
→ 炎症経路への関与が少なく、比較的安定して利用される脂質
⑥ オメガ3脂肪酸
→ 炎症バランスを整える方向に働くことが報告されており、積極的に取り入れたい脂質
このように
「どの脂を減らすか」よりも「どの脂に置き換えるか」 が、実はとても重要です。
では一つ一つ解説していきましょう。
【控えめにしたい脂質】
➀トランス脂肪酸
ショートニング、菓子パン、スナック菓子、ファストフードなど加工食品に多く含まれる脂質です。
トランス脂肪酸は、自然界にはほとんど存在しない「トランス型」という特殊な構造をもつ脂質です。
一般的な不飽和脂肪酸は「シス型」で、折れ曲がった柔軟な形をしているため、細胞膜に適度な流動性を与えます。
一方、トランス型は直線的で硬い構造をしており、脂質としての性質が大きく異なります。
この構造の違いから、細胞膜のリン脂質に取り込まれた際に膜の流動性や脂質代謝に影響を与える可能性が指摘されており、炎症反応との関連も報告されています。
そのため近年では、「量」よりも「質」が重要な脂質の代表例 と考えられ、日常的な摂取はできるだけ控えることが推奨されています。
②オメガ6不飽和脂肪酸(過剰時)
サラダ油、コーン油、大豆油、マーガリン、マヨネーズなど
前提として、オメガ6は必須脂肪酸です。細胞膜の原料であり、炎症という必要な反応を起こすものであり、ゼロはあり得ない脂です。
ところが、オメガ6は、炎症の根拠となるアラキドン酸カスケード反応により炎症物質を生成するため、過剰になると炎症の制御が利かなくなり、慢性炎症の原因となります。この慢性炎症が、動脈硬化や脂肪肝などの生活習慣病と関連すると考えられています。
つまり「悪い脂」ではなく、“摂りすぎが問題になる脂” です。
③飽和脂肪酸が過剰な時の悪
バター、牛脂、ラード、脂身肉
過剰に摂りすぎると、インスリンの感受性を下げたり、肝臓での脂肪生成が亢進するので、脂肪肝リスクとなります。
適切にとるのであれば、問題となる脂ではありません。
④糖質+脂質の組み合わせ
菓子パン、フライドポテト、ファストフード、カレー、丼物など
菓子パン・揚げ物+ごはん・ファストフードなどは、
- 糖 → 肝臓で脂肪合成
- 脂 → そのまま肝臓へ流入
というダブル負荷になります。
日常的に続くと、脂肪肝につながりやすい食習慣と考えられています。
【積極的に取り入れたい脂質】
➀オメガ9不飽和脂肪酸
オリーブ油、キャノーラ油、アボカド、ナッツ類
炎症反応であるアラキドン酸カスケード反応に組み込まれないため、炎症を強く起こさず、脂質代謝を安定化させます。抗炎症ではなく、非炎症と言えます。
比較的安定してエネルギーとして利用される脂質です。日常使いの油としておすすめといえます。
②オメガ3不飽和脂肪酸
えごま油、アマニ油、EPA、DHA
オメガ3は、先述のアラキドン酸カスケードと“競合”する形で働くことが知られています。「炎症を起こさせない、終わらせる脂」と言えるでしょう。
現代人は不足しやすい脂質のため、魚やえごま油などから意識的に補いたい成分です。
特にEPAは、炎症反応であるアラキドン酸カスケード反応を競合的に拮抗することにより、抗炎症に働きます。また、肝臓での脂肪合成を抑制し、代謝を促進させます。脂肪肝への進展を抑制するため、取り入れたい脂質です。
【まとめ ー 脂質は「敵」ではなく「設計図」】
脂質は悪者ではありません。
大切なのは
✔ どの脂を
✔ どのくらい
✔ どんなバランスで
摂るか、です。
「質を整える」ことが、結果として肝臓や血管の負担軽減につながっていきます。
少しだけ賢く脂を選ぶ。それだけでも体は確実に変わっていきます。
今日の食事から、ぜひ意識してみてください。
※本記事は一般的な栄養・健康情報の提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。