在宅こぼれ話〜Eさんとの思い出〜

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薬剤師 微熱

在宅業務担当しています。音楽と自然が大好きです。好きなことには熱中するタイプで、最近ピアノを始めました。健診でコレステロール高めと指摘されるお年頃ですが自転車で毎日駆け回っております。人生の最期を迎えるその時に、「いい人生だった」と言えるように過ごしたいと思っています。

在宅医療をしていると、

ときどき、どうしても忘れられない人がいる。

Eさんも、その一人だ。

 

何かあると、すぐに呼び出された。

口が悪くて、要求が多くて、

担当するケアマネさんやヘルパーさんが次々と変わっていった。

 

在宅の仕事を始めたばかりの頃の私は、よく分からないまま、

Eさんの言う通りに動いていた。

でも他の仕事も忙しくなり、

ケアマネさんに相談したその日から、不思議と呼び出しは減った。

 

Eさんの体が、

少しずつ思うように動かなくなってきていることは、

定期的な訪問の中で、何となく感じていた。

 

ある日、自宅で転倒し骨折して入院した。

手術後の経過は良好で、

リハビリをして退院後は

自宅に戻る予定だった。

 

その入院中、

自宅で1人残されたご主人の体調が悪くなり、施設に入った。

そして、Eさんが退院する前に亡くなった。

 

自宅に戻ってきたEさんは、

以前よりも、ずっと小さく見えた。働き者でじっとしていられない性格なのに、しんどくてベッドに横になっている日もあった。

 

退院後しばらくは一人で暮らしていた。

施設は嫌だと、頑なに拒んでいた。

それでもある日、

「もうだめだ」

そう言って、Eさんは施設に入ることになった。

 

限界だったのだと思う。

 

施設に入って、少したった頃。

会社の携帯に、Eさんから着信があった。

 

「どうしました?」

そう聞くと、

「ごめん、間違い」と言われた。

施設での生活について聞くととても良いよと嬉しそうに報告してくれた。

 

それだけで終わると思ったら、

少し間があって、

こんな言葉が返ってきた。

 

「あんたには世話になったね。今度お茶しよう」

 

「いいですね、是非」と私は答えたけれど、

それが実現することはなかった。

 

でもとても嬉しくかった。

 

嫌味ばかり言われて、

嫌われているのだと思っていた時期もあった人が

最後にくれた言葉が、それだった。

 

在宅医療では、

感謝は必ずしも分かりやすい形で返ってこない。

でも、ちゃんと届いている。

 

Eさんのあの一言は、

今でも私を、また前に進ませてくれている。