「こむら返り」にはカリウムよりマグネシウム

薬剤師 たまちゃん先生のプロフィール写真

薬剤師 たまちゃん

長年薬剤師として、地域の皆様の健康をサポートしてきました。 私自身も子育て真っ只中、更年期を経験しているからこそ、 同じように悩まれている方々の気持ちに深く共感できます。 ホルモンバランスの変化による体調不良や、心の揺れ動きなど、 一人で抱え込まず、ぜひお話を聞かせてください。 自身の経験に基づいたアドバイスで、皆様の心と体の健康をサポートいたします。

 

ふくらはぎの筋肉が、突然強く収縮して、なかなか弛緩しない状態を「こむら返り」と言います。こむらとは、ふくらはぎを指しますが、実際は全身の筋肉の至る所で起こり、強い痛みを伴います。

 

こむら返りが起こる原因は様々あり、

・イオンバランス(ミネラルバランス)の変動

・脱水

・筋肉疲労、筋肉低下

・冷え、老化などによる血流悪化

など、です。

 

中でも、イオンバランス(ミネラルバランス)について考えていきたいと思います。

 

よく、「カリウムが低下しているから」と言われますが、実はそうではありません。

 

筋肉の収縮弛緩に関しては、主に、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムのイオンたちが関わってきますが、大変複雑な動きをするので、多いから少ないからと単純な反応をするわけではありません。

 

カリウムについて簡単に言うと、カリウムイオンは多くても少なくても筋肉は弛緩します。

(専門的説明が入ります。)

低カリウム…過分極により収縮が起きにくく弛緩

高カリウム…一時的に脱分極により収縮しかけるがナトリウムチャネルの不活化により弛緩

 

カリウムイオンによる筋肉の収縮は補助的な役割であり、こむら返りにはもっと重要なミネラルがあります。

 

それは、マグネシウムとカルシウムです。

 

筋肉の収縮の反応には、カルシウムイオンが起爆剤となり起こります。

筋小胞体から放出されたカルシウムイオンが、アクチンミオシンフィラメント(筋繊維)の滑り込みが起きて筋肉が収縮します。

 

一方マグネシウムイオンは、カルシウムイオンと関わりが強く、カルシウムマグネシウムポンプにより、カルシウムイオンを筋小胞体に戻す役割があります。このため、筋肉は弛緩します。

 

いわば、カルシウムイオンはアクセル、マグネシウムイオンはブレーキの役割です。

 

つまり、

マグネシウムイオンが少なくなると、カルシウムイオンを制御できなくなり、筋肉が収縮しやすくなり、こむら返りが起きやすい状態になります。

 

ここまでの話をすると、カルシウムを摂りすぎるとこむら返りが起きやすいのではないか、と言えそうですが、そうではありません。

カルシウムを摂取しても血清カルシウムイオン濃度はあがりますが、筋小胞体内カルシウムの動きが活発になるわけではないからです。

ちなみに血清カルシウムも筋収縮に関わりますが、話が複雑になるので、除外します。

 

ですから、こむら返りが起きやすいイオンバランス(ミネラルバランス)変動の原因は、マグネシウムにあるのです。

 

こむら返り対策として、適正なマグネシウムを補給することが正しい対策と言えますね。

 

マグネシウムの適正量は、1日あたり、男性350〜370mg、女性260mg〜290mgです。

日本人の食事では、1日250〜270mgしか摂れていません。ですから、意識して、以下の食材を取り入れるとよいですね。

 

ナッツ類 アーモンド10粒…40mg

豆類   納豆1パック…50mg

海藻類  ワカメの味噌汁1杯…20mg

穀類   玄米ごはん1杯…50mg

 

摂りすぎは、他の問題が出てくるので、適正量摂ることがとても大切です。

 

突如として起こる強い痛みですから、防ぐ方法があれば取り組んでいきたいですね。

 

他にも、血流促進ためのマッサージや冷え対策なども、一定の効果があるので、併せて行なっていくとよいと思います。