在宅こぼれ話④ 「一人暮らし、でも独りじゃない」

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薬剤師 微熱

在宅業務担当しています。音楽と自然が大好きです。好きなことには熱中するタイプで、最近ピアノを始めました。健診でコレステロール高めと指摘されるお年頃ですが自転車で毎日駆け回っております。人生の最期を迎えるその時に、「いい人生だった」と言えるように過ごしたいと思っています。



O
さんは、とてもかわいらしい方でした。

 

訪問すると、いつもにこにこと迎えてくれます。

 

お部屋には季節の花が飾られ、機嫌がいい日は突然歌を歌い始めることもありました。

 

Oさんは、カラオケが何よりの楽しみでした。

 

好きな曲や歌詞を自分でメモし、デイサービスで歌う時間を心待ちにしていたのですが、コロナ禍でカラオケは中止に。

 

それから少し元気がなくなったように感じていました。

 

ある日の訪問で、Oさんの好きな歌を流してみることにしました。

 

すると、顔をくしゃくしゃにして笑いながら手を叩き、本当に嬉しそうに喜んでくれたのです。

 

その笑顔はまるで少年のようで、私まで嬉しくなり、一緒に楽しい時間を過ごしました。

 

Oさんは団地に長く住み、ご近所さんとも自然につながって暮らしていました。

 

年齢を重ね、一人では難しいことが増えても、近所の方がさりげなく手を貸してくれていたそうです。

 

その後、Oさんは入院され、そのまま病院で亡くなりました。

 

お通夜とお葬式は住み慣れた団地で行われ、多くのご近所さんが集まりました。

 

私は出棺の前にお顔を見せていただき、心の中でそっと声をかけました。

 

「お帰りなさい。帰ってこられて良かったですね。」

 

住み慣れた場所には、家族だけではない「居場所」があったのだと思います。

 

Oさんは一人暮らしでした。

 

けれど、決して独りではありませんでした。

 

団地のみなさんに見守られながら暮らし、最期はその場所へ帰り、たくさんの人に見送られて旅立っていく。

 

その温かな光景を目の当たりにして、「人はどこで暮らすか」だけではなく、「誰とつながって暮らすか」が、その人らしい人生を支えてくれるのだと教えてもらいました。

 

在宅医療は、病気や薬だけを支えるものではありません。

 

その人が大切にしてきた暮らしや、人とのつながりを支える医療でもあるのだと、Oさんが教えてくれました。